Saturday, June 16, 2012

最近観た映画


Jiro Dreams of Sushi


銀座駅地下にある老舗の名店「すきやばし次郎」で半世紀以上に渡り寿司を握り続け、今や世界一ともいわれる寿司職人の二郎さんの人生(=仕事)のドキュメンタリー。

(一流の)寿司職人というのは自分も昔から興味があり、アメリカで中国人が即席で握ったような安い寿司を食べにいくたびに自分の中で納得がいかなかったりしたわけです。あまりなじみのない欧米人にとっては「寿司は寿司」なわけで。

そんなわけで昔から多少なりとも興味があった寿司職人についてのドキュメンタリーがアメリカ人監督によって制作され、好評を博しているという事で観てきました。

感想はというと・・・ごく正統なドキュメンタリーでした。そして映像がとてもきれい。
寿司のアップのショットなども二郎さんに対する敬意を感じる、美しい撮り方でした。
欧米人ならではの異文化(特に日本)に関するエキゾチックな憧憬が一見無意味なクレーンショットや早回しなどにも現れたのでは?
日本人監督だったら寿司を客に出すところで大真面目にスローとか使わない気がするし、妙にドラマチックな音楽もしかり。こういう大げさ感がないとアメリカの観客には伝わりにくいのかもしれない。

頑固者で職人気質の二郎さんと息子二人の関係もシンプルに伝えられ、日本の古き家長制度や年功序列などもさわりだけ紹介され、ちょっと説明が足りない気がする部分もあったのだけど、十分映像として、また欧米人が見る日本の感覚を疑似体験して楽しめました。

尺はちょうどいい長さだと思ったけど、個人的にはもうちょっと二郎さんの下で働き続ける息子さんのストーリーももっと知りたかった。腕は超一流、頑固で誰も文句のつけられない(つけようもない)、偉大な父親。同じ業種を選んで何十年も彼の陰で働き続ける息子さんの心のうちはちょっと計り知れない。「寿司」やその他の日本文化についてある程度は知っている自分としては家族間での人間ドラマに興味をそそられてしまった訳です。

寿司一筋に人生をかけた二郎さん。無駄なものを省いて省いてやっとたどり着いた究極にシンプルな人生(=寿司)。
「自分の仕事に惚れなきゃダメ」とか納得するセリフも結構ありました。こういう職人気質って万国共通なんだなあ。



Drive


そしてこれもまた「ハードな仕事をただ黙々こなす」男のフィクション映画。

最近何かとよく見るライアン・ゴスリング。もちろん男前は男前なんだけど、顔も非対称だしいつも困ったような顔をしている(笑)、ちょっと一癖ある役者。まだ日本ではそれほど有名ではないっぽいけどアメリカでは大手ファッション誌の表紙も飾る超売れっ子です。

とはいえ自分も、「Half Nelson」(ライアンが主役のクラック中毒教師を名演)と「Lars and His Girl」(人形と本気で恋に落ちる引きこもり男役)以外観た事がなく、今更Netflixにて視聴。
ストーリーはちょっと「タクシードライバー」っぽいかなと思ったけど、友人は「レオン」っぽいって言ってた。
それを足して割った感じ??

そんなわけで特に抜き出たオリジナリティのある話しでもないんだけど、ハードボイルドなキャラ/ストーリー設定と静かかつ暗美しい(←今でっちあげた造語です)映像でとんでもない事が淡々と起こっていく。これだけで、なんかOK。だからライアンがいくらごにょごにょ不明瞭な滑舌で大事なセリフをしゃべってもそれほど気にならない(笑)
(これツイッターでつぶやいたらアメリカ人も「彼のセリフはいつも聞きづらい。」と同意してくれたのでオレのヒアリング力のせいではない!)

てなわけで、全部ちゃんと理解できたのもあやふやなまま、「まあまあ好き」「雰囲気が気に入った」映画にランクインしました(笑)。何をもって「良い映画」とするかって難しいよね。抜きん出て好きな部分もなかったけど、映像/音楽/演出/ストーリー/美術といった様々な要素がバランスよく「まあまあ」と良かったので良い映画だったと思います。

こういうゆったりしたリズムで、暗美しく(←またそれか)、かつややエグくてハードボイルドな映画って最近の流行なのかなあ?どちらにしろ個人的には結構好きです。サントラの妙も含め。

ところで役者において「存在感」「空気感」ってのは本当に大事だと思う。特にこういう映画の主役は。これがディカプリオとかだったら雰囲気一気に変わっちゃうよね。



Even the Rain

おそらく今年観た映画の中で今のところ一番好きな映画。
技術的に真新しかったり特筆すべき点はないのだけれど、何よりストーリーが真摯でわかりやすく、キャラクターがリアル。

ストーリーは、コロンブスの大航海時代を背景にした歴史映画の製作に、人件費/撮影費の安いボリビアを訪れる撮影クルーの物語。つまり映画の中にもう一つの映画があるっていう、本当はオレの嫌いなパターン。

劇中、撮影される「歴史上のストーリー」と、現実に起こる「現代の話し」が交錯しつづけ、「搾取する側の人間と、それに抵抗しながらもやりこめらてしまう側の人間」という今も昔も普遍的な構図をたくみにあぶり出しているのがわざとらしくなく、感心。先住民の掘り出す金をだまし取る白人(映画の中の映画)=強制的に近代化された先住民の限りある水を奪い取ろうとする政府/会社(映画の中の現実)。

その二つの世界でリーダー役を演じるのがダニエルという純血の先住民で、彼が「水戦争」のデモの先頭に立ってしまうがゆえに、映画の撮影自体が危ぶまれていく。

監督(演じるのはガエル・ガルシア・ベルナル)にとって情熱の全てを注いだ映画の撮影がようやく進行する中、このダニエルが警察に顔面をボロボロに殴られたり、逮捕されたりしてしまうわけで、監督の気持ちがいたいほど伝わってくる。しかもダニエルの行っているデモ運動は、映画のテーマや監督自身の性格からすると、筋の通った真っ当な事で応援さえしたい事。でも大きな資金が注ぎ込まれ、動き始めてしまった以上後戻りのできない、撮影を終了させないといけない。

資本主義の大きな矛盾と葛藤。
ん?書いてて気付いた。もしかしたら同じ業種だからこの映画をひいき目に見ているのか?
そういやついこないだの撮影も出演者ドタキャンがでたせいで大変だったよなあ・・・。
「覚悟が出来てしまった人間」は何をもっても動かせない。そしてそのゆるぎない覚悟があるのは監督とダニエル。同じテーマをもって戦っているはずなのに、ベクトルがどうしてもぶつかりあってしまう。

話しがちょっとずれましたが、そんなこんなで観ている間ずっとテンションがあがりっぱなし。
そして映画撮影/水戦争という大きな背景とテーマから、最後は個人同志のわかり合い/そしてわかり合えない部分におさまっていくところがニクい。

前半、金のことばかり話してイヤなやつだったプロデューサーが後半部で人間らしさを取り戻すところ・・・
狂い続ける歯車の中で自分のピュアな部分をまもり抜いたシーンはちょっとグッときました。そしてそのプロデューサーを待つ監督と、監督にそっと連れ添う主演俳優・・・。

ネタバレになりそうなのであまり言いませんが、「人間性」についてもう一度考えさせてくれた佳作でした。
骨太なオトコ気にあふれてソウルフルで、予算もきっとそこそこかかっている映画、どんな大御所の男性監督かと思えば、まだ無名の女性監督じゃないですか。すばらしい!南米の映画はなんかパワーを感じるなあ。作りは雑でも未来がある。




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